研究概要 |
本研究は、日本庭園の特徴的構成のうち、1)異なるパターンの対植、2)透かしのない植栽とある植栽、を対象に、韓国、中国、アメリカ合衆国の人々の認知過程を比較・解析し、日本庭園の特徴的構成と日本人の認知特性の関係を解明することを目的としている。1)異なるパターンの対植に対する日本人と韓国人の眼球運動を比較した朴ら(2006)、それらとアメリカ人の眼球運動を比較した佐野ら(2009)を踏まえ、中国人、カナダ人を対象にした実験を行った結果、韓国人、アメリカ人と類似する結果となり(Son et al.,2012)、日本人の特異的な認知特性がより明確になった。2)透かしの有無に対する眼球運動及び脳血流量を同時計測する実験を日本人を対象にして行った結果、透かした樹木は日本人にとって視覚刺激が少なくリラックスさせる効果があることが明らかとなった(Joo,et al.,2012)。そして、平成23年度予算を一部執行延期して調査したニューヨーク州ソネンブルグの日本庭園は、1906年に日本人が設計・施工し、1915年にアメリカ人によって拡張されたことから、日本人とアメリカ人の日本庭園の捉え方や表現に明確な違いがみられた(Ristovska,2013)。つまり、日本人設計・施工区域とは異なり、アメリカ人拡張区域には曲折のある流れや凹凸のある地形でおいても規則的な列植が為され、また植栽の形状を維持し奥行き感を保つ透かし剪定が為されていなかったために日本庭園の多様な自然的構成や空間的広がりが失われていた。したがって、本研究で解析対象とした日本庭園の特徴的構成が妥当であることが確認できた。
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