研究概要 |
開花時期と果実形質に関わるQTLについて解析を行った結果,計58のQTLが検出された。これら異なる形質を制御する複数のQTLは多くの場合,ほぼ同一の位置に座乗したので,実際に関与する遺伝子の数は限られるものと考えられた。最も顕著な例は第1染色体のC2_At5g49480領域で,この領域が野生種型になると,開花が早まるとともに花数増加や葉数減少などが起こるなど,多面発現の可能性が示唆された。このように,花序や果実の発育と開花の早晩性との密接な関係がQTLレベルで示唆されたことから,第1染色体のQTLクラスターを含む領域が野生種型に置換された系統と栽培種の茎頂を実体顕微鏡下で観察して花芽分化時期の差異を調べた。花芽分化時期は部分置換系統の方が栽培種より3日早いだけであったが,置換系統は栽培種よりもプラストクロンが短く,結果として開花は7日以上も早くなった。このことから,開花時期の差をもたらす発育要因として花芽分化のタイミングだけではなく,分化後の花序の発達速度も重要であることが明らかとなった。これらQTLのクラスターに関して,早晩性に関するQTLの原因遺伝子の調査が進んでいるシロイヌナズナの遺伝子に着目し,トマト相同遺伝子に的を絞って今回検出された早晩性のQTLとの関連を検討した。その結果,Flowering control locus AとEmbryonic flower2の相同遺伝子が,それぞれ第1染色と第3染色体のQTLクラスター領域内に位置していることが明らかになった。シロイヌナズナにおいてFlowering control locus AとEmbryonic flower2はいずれも非感光性の経路に関係していることから,中性植物であるトマトの早晩性に重要な機能を持っている可能性が考えられた。
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