研究概要 |
本課題は果実に糖が蓄積する仕組みを「糖輸送体」という分子的観点から明らかにし,特にトマトをモデル作物として糖輸送体の網羅解析・機能解析を行い,形質転換体作出による果実の高糖度化を目指した. 1, 遺伝子発現解析:平成21年度にも実施したが,トマト完全長cDNAデータベースに見出した20種の糖輸送体の遺伝子発現を,半定量的RT-PCRにより確認し,SlpGlcT3, SISFP2, SIVGT2, SIAZT2など,果実で特異的に発現する糖輸送体を特定した.また,セイヨウナシ果実の成長にともなう,糖代謝物の量と糖輸送体の発現をオミクス解析により明らかにし,重要な糖トランスポーターをリスト化した。 2, 糖輸送活性:AZTファミリーの糖輸送体をGFP融合タンパク質として発現させるためのベクターを構築し,糖輸送のバックグラウンドが低い酵母EBY VW4000株に導入した.これら酵母の液胞膜にGFPの蛍光を確認できたため,様々な糖を含む培地で培養したが,形質転換前の酵母と生育が変わらなかった,この酵母を確認したところ糖輸送活性を持つように復帰変異をしていることが分かり,新たな酵母株を取り寄せて実験を進めている. 3, 細胞内局在:AZTファミリーとGFPの融合タンパク質を発現させるためのベクターを構築し,タマネギ表皮細胞ヘボンバードメント法で導入した.その結果,GFPの蛍光が液胞膜で観察され,AZTファミリーが液胞膜の糖輸送であることが示された.(平成21年度にはSFPファミリーとVGTファミリーが液胞膜に存在することを確認済). 4, 形質転換体の作出:カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの制御下で,SFPファミリーをRNAi法のより発現抑制した形質転換トマトを作出したが,植物形態や糖含量に有意な差は見られなかった.
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