我々は河川生態系の固有種の生育環境を明らかにするための研究を1970年代から続けてきたが、この10年ほどの間にマイクロハビタットの重要性が明らかになってきた。ハビタットとしては同一とみなされる場合にも、(細粒土砂の堆積や蘚苔類の生育の有無など)マイクロハビタットの違いによって植物に対する影響がまったく異なることがあることがみいだされたからである。 しかし、上流域の岩場を生育地とするユキヤナギでは蘚苔類の生育が実生の定着を助け、中流域の砂礫地を生育地とするカワラノギクでは蘚苔類の生育が実生の定着の妨げとなるように、未だ体系的な理解は得られていない。 そこで、首都圏を中心に日本の河川を比較しながら、(1)河川の上流域の岩場のユキヤナギ、(2)中流域の砂礫地のカワラノギク、(3)下流域の干潟のウラギク、(4)中流域の礫質の水域に生育するカワシオグサに着目して、マイクロハビタットの生成、生育初期の植物の反応、出水による破壊からの再生、実験的なアプローチを行って、マイクロハビタットを体系的に理解する。さらに、(5)河川工学の観点から(1)~(4)について総合的な理解を深める。
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