研究課題
RNAサイレンシングは、非常に優れた逆遺伝学的手法として各種植物の遺伝子の機能解析に幅広く利用されている。_筆者らはリンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)ベクターが実験植物護タバコ)でのトランスジーン(GFP遣伝子)や内在性遺伝子(Magnosium chelatase(SU)遺伝子など)のサイレンシングを効率良く、かつ安定的に誘導し、RNAサイレンシング誘導ベクターとしても有望であることを既に明らかにした。本課題では、実験植物(Nicotiar属植物やシロイヌナズナ)に加えて、マメ科植物、ウリ科植物、バラ科果樹を供試して、これら植物においてALSVベクターが効率的かつ安定的なVIGS誘導ベクターとなることを明らかにし、ALSVベクターを利用した各種植物でのVIGS誘導系,を確立することを目的として実施した。20年度の成果は次のとおりである。(1) Nicotiana属植物(タバコ,N.benthamiana,N.glutinosa,N.occidentalis)やシロイヌナズチなどの実験植物に加え、マメ科植物(ダイズ、エンドウ、アズキ、ササゲ)、ウリ科植物(キュウリ、メロン、スイカ、ズッキーニ、トウガンなど)、およびナス科植物(トマト、ジャガイモ)などの栽培植物でも効率良く、安定的に内在柱遺伝子のサイレンシングを誘導するベクターであることが明らかになった。ダイズではALSVの種子伝染を利用した種子(胚)や発芽直後の植物体での内在性遣伝子のVIGSの誘導に成功した。(2) ALSVベクターに導入する遣伝子のサイズとVIGSの安定性との関係を調べる目的で、一連の長さのタバコPDS遺伝子(100bp、150bp、200bp、300bp)を導入したALSVベクターを作製し、各ALSVベクターをタバコに接種後、葉の白色化出現時期、mRNA量、クロロフィル含量を解析した。その結果、導入遺伝子サイズが200bp以下で、VIGSが長期間持続することが明らかになった。(3) ALSVベクターの接種法として、カーボランダム法およびパーティクルガン法を比較検討した結果、草本植物においては両法とも高い感染率を得ることができたが、リンゴなどの果樹ではカーボランダム法による接種は困難であった。一方、リンゴの発芽直後の種子(子葉)へのパーティクルガン法による接種が非常に高い感染効率を示すことが明らかになった。
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Virology 386
ページ: 407-416