研究概要 |
昨年度までに、リンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)ベクターがマメ科植物(ダイズ、エンドウ、アズキ、ササゲ)、ウリ科植物(キュウリ、メロン、スイカ、ズッキーニ、トウガンなど)、およびナス科植物(トマト、ジャガイモ)などの栽培植物で効率良く、安定的に内在性遺伝子のサイレンシングを誘導するベクターであることが明らかにした。また、ALSVベクターがタバコやシロイヌナズナの病害抵抗性遺伝子の解析に利用できることを明らかにした。 平成22年度は、ALSVベクターを用いたバラ科果樹でのVIGS実験系を確立する目的で,リンゴ実生苗へのウイルス接種法を検討し,続いてALSVベクターによるリンゴおよびナシの内在性遺伝子のVIGS誘導を行った。感染葉から抽出したALSV-RNAをパーティクルガン法でリンゴ実生苗に接種した結果,ほぼ100%の感染率を得ることができた.次に,リンゴのルビスコ小サブユニット(rbcS)遺伝子の一部をALSVベクターに組み込み、ウイルス化した後,パーティクルガン法でリンゴおよびニホンナシ実生苗に接種した.その結果,接種後約2週間からrbcS-ALSV接種個体では葉の退緑と矮化,actin-ALSV接種個体では葉の奇形が観察された.rbcS-ALSV接種リンゴ葉のRNA分析では,rbcS-mRNAの著しい減少とrbcS-siRNAの生成が認められた.以上から,ALSVベクターはリンゴおよびニホンナンシのVIGS誘導ベクターとして利用できることが明らかになった.なお、バラ科果樹類での効率的にVIGSを誘導できるウイルスベクターはALSVが初めてで、今後、リンゴなどの遺伝子機能解析のための強力なツールとして利用できると考えられた。
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