研究課題
植物DNAウイルスは、媒介昆虫により機械的に植物細胞内に侵入したのち、複製の場である核等へと細胞質を移行し、複製後、細胞質を移行して隣接細胞への通路である原形質連絡に至る。この細胞質移行の機構は不明であるが、ブラウン運動による自然拡散ではない。なぜなら、細胞質にはオルガネラや細胞骨格が密に存在して一おり概ね20nm以上の構造物はほとんど動けないが、植物DNAウイルスの粒子は数十nmの大きさがあるからである。そこで、植物DNAウイルスがモータータンパク質であるkinesin, dyneinあるいはmyosinと結合し、細胞骨格である微小管あるいはアクチン繊維を利用して細胞質を移行する可能性の検証を行っている。ジェミニウイルス科クルトウイルス属のBSCTVおよびカリモウイルス科カリモウイルス属のCaMVの感染性クローンを構築し、モデル植物であるシロイヌナズナへの感染系を確立した。CaMVの感染に対する微小管形成阻害剤propyzamide(Prop)およびアクチン繊維形成阻害剤latrunculin B (LatB)の影響を調べたところ、両者ともウイルス感染率を低下させたが、LatBの影響がより大きかった。細胞内のウイルス粒子を可視化するために、ジェミニウイルス科ウイルスの外被タンパク質(CP)の報告されている立体構造情報およびアミノ酸配列情報を元に、tetracystein tagを挿入してもCPの機能が失われないと期待される配列を推定した。シロイヌナズナゲノムからモータータンパク質のカーゴ結合部位の遺伝子を検索し、そのいくつかを単離し、CaMVの粒子表面タンパク質P3、CPとーの相互作用を酵母ツーハイブリッド法により検証している。
すべて 2008
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Archives of Virology 153
ページ: 1731-1735