研究課題
研究代表者のグループが同定したシロイヌナズナの非宿主抵抗性に関与する遺伝子LIC1を中心に、研究を推進した。シロイヌナズナを宿主としない炭疽病菌(不適応菌)は、野生型シロイヌナズナに対しては見た目上、何の変化も引き起こさないのに対し、lic1変異体に対しては明確な壊死斑を形成する。本年度は、まず、lic1変異体上における不適応菌の感染行動の詳細を調査した。その結果、不適応型菌は、本変異体において侵入率の上昇を示さなかった。この結果は、抗菌物質生産に関わるPEN2遺伝子の変異体において、顕著な侵入率の上昇が見出されるのとは対照的であった。したがって、lic1変異体の壊死斑は、菌侵入に依存するのではなく、抵抗反応時の細胞死の抑制能の欠損によると推定された。この考えは、lic1変異体にPAMPsの一つであるキチンを処理すると壊死斑形成が誘導された結果により、さらに支持された。また、lic1変異体における壊死斑形成(細胞死)は、pad4やesd16変異の導入によって部分的に抑制され、lic1変異依存的な細胞死には、サリチル酸経路が関与していることが判明した。また、驚くべきことに、lic1変異体に対して、pen2変異を導入した結果、lic1変異依存的な細胞死が部分的に抑制されることが明らかとなった。このことは、PEN2がその合成に関与する抗菌物質が、lic1変異体における細胞死に関与していることを強く示唆している。LIC1がコードするタンパク質は、MACPF(membrane attack complex and perforin)と呼ばれる膜挿入ドメインを有している。現在、LIC1が、細胞膜上に局在し、抗菌物質などの輸送に関わっているという仮説をたて、検証を開始している。さらに、欠損することによりlic表現型を示す新たな遺伝子として、EDR1と呼ばれる遺伝子の同定に成功している。
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The Plant Cell 21(未定印刷中)
Emergent Functions of the Peroxiosme (レビュー集) 1
ページ: 33-42