研究課題
研究代表者は、不適応型炭疽病菌(ウリ類炭疽病菌)によって、明確な壊死斑が形成されるシロイヌナズナlic1変異体、およびその原因遺伝子LIC1(NSL1)の同定に成功している。昨年度までの研究により、lic1変異依存的な細胞死誘導には、PEN2が関与するグルコシノレート系抗菌物質の合成が必要であることを明らかにしている。PEN3がコードするABCトランスポーターは、flg22処理時のカロース合成に必要であることが報告されており、PEN3がPEN2関連抗菌物質を排出することにより、カロース合成が誘導されることが示唆されている。今回、flg22処理時のカロース合成を1fo1変異体で調べた結果、pen3変異体とは異なり、そのカロース合成は誘導され、LIC1はflg22処理時におけるPEN2関連抗菌物質の排出には必須ではないことが示唆された。また、lic1 pad3変異体の解析より、lic1表現型へのカマレキシンの関与の度合いは低いことが明らかになった。さらに、乙π1ホモログ遺伝子の変異をlic1変異体に導入した多重変異体を作出・解析した結果、LIC1ホモログ遺伝子がLIC1と協調する形で細胞死制御に関与することが示唆された。また、これまでに石侃1遺伝子の変異は、lic表現型を引き起こすことを明らかにしているが、本年度は、グルタチオン生合成酵素であるGSH1の変異体がlic表現型を示すことを発見した。GSH1に変異を有するpad2変異体では、不適応型炭疽病菌であるクワ炭疽病菌の侵入率の上昇が見出され、さらに変異体では接種時におけるグルタチオン含量が顕著に低下していた.この結果より、侵入阻止型抵抗性へのグルタチオン合成の関与が示唆された。興味深いことに,pad2変異体においては侵入菌糸が接種部位を越えて伸長していた。さらに、トリパンブルー染色より、edr1変異体の接種部位において見られる細胞死が、pad2変異体では顕著に弱まっていることが明らかとなった。この結果より、GSH1依存的なグルタチオン合成が、侵入阻止型の非宿主抵抗性に加えて侵入後抵抗性に必要であることが示唆された。
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