研究概要 |
本年度も前年度に引き続きCry4Aaの殺虫活性に関与する機能構造について解析した。前年度ではCry4Aaの殺虫活性にドメインIIの1oop2が必須であることを示す結果を得た(Mohammad et al., 2009)が、本年度はloops 1~3を構成するアミノ酸残基をアラニンに置換した変異体を構築し、Cry4Aaのloop構造の生物学的機能をさらに詳細に解析するための研究を進めた。その結果、最終的にloops 1~3を構成するアミノ酸残基はアカイエカ(Culex pipiens)幼虫に対する殺虫活性を大幅に低下させることなしに置換可能であると判明した(Mohammad et al., 2010)。一般的にCry1など、Cry4Aaと構造が類似する他のCryトキシンでは、loops 1~3が受容体結合部位と考えられている。本研究の結果は構造の類似性にも係わらず、Cry4Aaの作用機構が他のCryトキシンのものと異なることを示唆していた。Cry4Aaの受容体結合部位に関してはドメインII構造に注目した機能解析を進めていく。 本年度はさらにCry4Aaのloops 1~3が改変可能であることを利用して、loop2領域にランダム変異を導入した変異体ライブラリーを構築し、そこから新しい活性を持つCry4Aa変異体をスクリーニングしようと試みた。その結果、約2,700のクローンを解析し、未だ野生型Cry4Aaを凌ぐ高い活性を持つ変異体は得ていないが、0.3~0.5%の確率で比較的高い活性を示す変異体が得られた。今後、効率を上げるために、ランダム変異を導入するプライマーのデザインを工夫していく。また本研究ではその他にもシャトルベクターpUC303を利用してCry4Aaをラン藻(Synechococcus PCC7942 R2-SPc)に導入する研究を進めているが、まとまった結果を得るに至っていない。
|