研究課題
本研究では高等シロアリの後腸共生細菌がセルロース消化に果たす仕組みについて解析を進めており、昨年度までに多様なセルラーゼが細菌ゲノムに存在することを明らかにしてきた。そこで、最終年度は前年度に引き続き細菌類によるセルロース消化がもっとも活発であると考えられる後腸前半部のメタゲノム解析を推し進め、合計約82Mbの配列情報を得た。得られた配列総リード数のうち、約1.3%(2474リード)が糖質加水分解酵素をコードしていると考えられ、386個のコンティグ配列として得られた。また、得られた配列総リード数のうち、約0.9%は糖質結合ドメインをコードしている配列を含むと考えられた。糖質加水分解酵素をコードする配列は合計55の糖質加水分解酵素ファミリーに分類され、このうち42%はリゾチームやキチナーゼなどのリグのセルロース分解に関係しない配列であった。リグノセルロース分解に関係する配列のうち、約1/3がセルロース分解に関係するものであり、残りの2/3は主にヘミセルロース分解に関連する遺伝子をコードした配列であった。セルロース分解に関与すると考えられる配列の中にはセロビオハイドロラーゼは含まれず、エンドグルカナーゼ、β-グルコシダーゼおよび、セロビオースフォスフォリラーゼから構成されていると考えられた。糖質結合ドメインををコードする配列は合計29の糖質結合モジュールファミリーに分類され、このうち約35%はキチンやでんぷん、ペプチドグリカン結合モジュールなどのリグのセルロースとの結合に関係しない配列をコードしていた。リグノセルロース分解に関係する配列のうち、やはり約1/3がセルロース分解に関係するものであり、残りの2/3は主にヘミセルロース分解に関連する遺伝子とをコードした配列と多様な基質結合性が報告されている結合モジュール(CBM37)をコードする配列であった。個々の遺伝子の詳細については現在解析中であるが、以上の結果から後腸細菌がリグノセルロース分解に果たす役割は、セルロース消化よりもむしろヘミセルロース消化にある可能性が強く示唆された。
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