研究概要 |
ホソヘリカメムシにおいて、in vitroで合成した概日時計遺伝子period,cycle,vrille,cryptochrome-mの2本鎖RNAを成虫腹部に注射し、数日後全虫体から抽出したRNAに対してNorthern hybridizationを行ったところ、それぞれのターゲット遺伝子の発現が抑制されていることが明らかになった。本種では後脚脛節のクチクラ層形成に概日リズムが見られる。そこで、上記概日時計遺伝子のRNA干渉によって、クチクラ形成リズムがどのように変化するかを観察した。RNA干渉を行った個体ではクチクラに層構造が見られず、クチクラ形成を制御する概日リズムが停止したと考えられた。これより、ホソヘリカメムシperiod,cycle,vrtlle,cryptochrome-mは概日時計の構成要素であることが示された。また、生殖状態のホソヘリカメムシメス成虫からアラタ体を摘出し、放射化学アッセイ法により幼若ホルモン(JH)合成活性を調べた。アラタ体1〜5個を1本の試験管に入れトリチウムで標識したメチオニンとともに培養した。合計60本分を調べた結果、カメムシ特有のJHに相当する画分に活性が検出されたのは5本のみで、その合成活性は0.014〜0.034pmol/分と低かった。培地にカルシウムイオノフォアやJHの前駆体としてファルネソールを添加したり、脳とアラタ体の共培養を行ってもJH合成量は上昇しなかった。以上より、ホソヘリカメムシにおいてJH合成量を放射化学法で測定することは困難であると結論した。一方、チャバネアオカメムシにおいて、JHの構造が決定されたことから、今後はチャバネアオカメムシとホソヘリカメムシを併用して光周性と休眠を支配する中枢機構を明らかにするべきと考える。
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