研究課題
本研究は、従来の抗ガン剤とは全く作用機構の異なる新規抗ガン剤開発のための基礎的知見を得ることを目的とする。その目的を達成するため昆虫由来抗微生物タンパク質改変ペプチドの抗ガン作用の解明及び昆虫由来の抗ガン物質の探索を通じ、新規抗ガン剤開発のためのシーズを得ることを具体的目標とした。平成20年度は改変ペプチドのガン細胞増殖抑制と形態変化に与える影響の解析をまず行った。6種類の培養ガン細胞(ヒト子宮頚ガン、ヒト肺ガン、ヒト扁平上皮ガン、マウス骨髄腫、マウス神経膠腫、アフリカミドリザル腎臓ガン)をA,B,C,Dの4種類のD型改変ペプチドを用いスクリーニングした結果、ペプチドBがマウス骨髄腫に対し強い抗ガン活性を示すことが明らかとなった。ペプチド濃度が高くなるにつれ細胞内から酵素の漏出が増えガン細胞の生存率が低下することからその抗ガン作用はペプチドによる細胞膜の破壊に起因することが示唆された。また電子顕微鏡による形態学的観察により明らかな細胞膜の破壊が観察された。次に、改変ペプチドBがマウス骨髄腫の細胞膜に直接作用しているかどうかを調べるため膜電位感受性の蛍光色素であるDioC_2を用い細胞を標識し、改変ペプチドによるガン細胞の脱分極の可能性について調べた。その結果、ペプチドBはマウス骨髄腫細胞膜の脱分極を引き起こすことが明らかとなりその作用標的が細胞膜であることが実証された。一方、改変ペプチドは骨髄腫には強い抗ガン活性を示すのに、なぜ他のガン細胞には効果がないのかについて調べてみた。その結果、ガン細胞表面に存在するマイナス電荷をもつホスファチジルセリンの量に抗ガン活性が依存していることが判明し、プラスに帯電した塩基性アミノ酸に富む改変ペプチドのホスファチジルセリンとの静電的引き合いがペプチドの細胞表面への吸着に重要であることが明らかとなった。
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Peptides 30
ページ: 660-668
Peptide Science 2007
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