研究課題
本研究は従来の抗ガン剤とは全く作用の異なる新規抗ガン剤開発のための基礎的知見を得ることを目的とする。その目的を達成するための昆虫由来抗微生物タンパク質改変ペプチドの抗ガン作用の解明及び昆虫由来の抗ガン物質の探索を通じ、新規抗ガン剤開発のためのシーズを得ることを具体的目標とした。平成21年度は新規改変ペプチド(D-ペプチドC2)を合成し、6種類のガン細胞(ヒト子宮頚ガン、ヒト肺ガン、ヒト扁平上皮ガン、マウス骨髄腫、マウス神経膠腫、アフリカミドリザル腎臓ガン)に対する抗ガン活性を測定し、従来のペプチド(D-ペプチドC)と比較を行った。D-ペプチドC2はD-ペプチドCのC末端にアルギニン残基を8個付け加え細胞膜を通過し細胞内へ移行できることを目指したものである。D-ペプチドC2はD-ペプチドCに比べいずれのガン細胞にも低いIC_<50>値(3.4~26.4μM)を示し強い抗ガン活性を示した。また、D-ペプチドC2が細胞内へ移行することを実証するため、ペプチドを蛍光色素で標識しヒト白血病細胞(Jurkat cells)を用いて調べた結果、細胞内へ移行できることが明らかになった。一方、D-ペプチドC2が細胞内のミトコンドリア膜に直接作用しているかどうかを蛍光色素JC-1を用いて調べたところ、このペプチドが膜を破壊し膜ポテンシャルを消失させていることが明らかとなった。さらに、電子顕微鏡を用いた調査からこのペプチドがJurkat細胞内のミトコンドリアに形態変化を引き起こすことが分かった。またマウス肝臓よりミトコンドリアを抽出し、in vitroにおけるD-ペプチドA,B,C,D及びD-ペプチドC2の影響を540nmにおける吸光度の変化を測定したところ、いずれかのペプチドもミトコンドリア膜の破壊を引き起こす結果となったが、その中でもD-ペプチドC2は一番強い活性を示すことが明らかとなった。
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