ボンビコール産生細胞で受容された神経ホルモンPBANの刺激は、NMU受容体ファミリーGPCRであるPBANRを介して細胞外Ca^<2+>を細胞内に動員する。昨年度、我々はこのCa^<2+>動員が、小胞体Ca^<2+>ストアの枯渇で活性化されるストア作動性チャネル(SOC)の活性化を介したものであり、小胞体膜IP_3受容体、IP_3生成に関わるホスフォリパーゼC(PLC)、3量体Gタンパク質の全サブユニット遺伝子のクローニングおよびこれら機能分子のRNA干渉法(RNAi)でのノックダウンから、PBAN刺激はGq→PLC→IP_3生成→小胞体Ca^<2+>ストア枯渇→SOCチャネル開口というカノニカル経路でシグナル伝達されることをin vivoで実証した。本年度は、SOCチャネルの化学的実体とその開口の分子機構の詳細を究明するため、小胞体Ca^<2+>ストアのセンサー分子と考えられるSTIMおよびSOCチャネル分子と考えられるOraiのカイコガホモログを解析した。まず、各々のホモログ遺伝子をクローニングしたのち、蛍光タグ標識したBmSTIM1とBmOrai1BおよびPBANRを昆虫培養細胞Sf9に一過的に発現させた再構築系を用い、PBAN刺激に応答した局在変化からそれらのfunctionalityを検証した。その結果、小胞体に局在したBmSTIM1はPBAN刺激で細胞膜(PM)に移行し、そこに局在するBmOrai1Bと共局在したのち、細胞外Ca^<2+>の流入に伴って再び小胞体にもどることが示された。さらに、これら分子のRNAiによるノックダウンでボンビコール産生が抑制されたことから、これら分子が各々、Ca^<2+>センサー、SOCチャネル分子として機能すると共に、フェロモン腺でのボンビコール産生に直接関与していることが実証された。
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