ボンビコール産生細胞で受容された神経ホルモンPBANの刺激は、NMU受容体ファミリーGPCRであるPBANRを介して細胞外Ca^<2+>を細胞内に動員する。昨年度、我々はこのCa^<2+>動員が、ストア作動性チャネル(SOC)の活性化を介しており、PBAN刺激がPBANR→Gq→PLCβ1→IP_3生成→小胞体Ca^<2+>ストア枯渇→SOCチャネル開口というカノニカル経路でシグナル伝達されること、さらに、BmSTIM1が小胞体Ca^<2+>ストアのセンサー分子であり、SOCチャネル分子であるBmOrai1Bと相互作用することでチャネルが開口することを実証した。本年度は最終年度にあたり、重要と思われる以下の3テーマに焦点を絞り解析を行った。(1)PBAN受容体アイソフォーム解析:カイコガ、アワヨトウ、オオタバコガフェロモン腺(PG)で発現する4種のPBANRアイソフォームに蛍光タグを付けてSf9細胞に一過性発現し、リガンドであるPBANとの結合に伴うリガンド/受容体複合体の動態を解析した結果、PBANR-Cのみがいずれのガにおいても細胞内internalizationすることが示され、真のPBANRとして機能する分子種であると考えられた。(2)脂肪滴TGリポリシスおよびpgFAR活性化に関わるリン酸化酵素の同定と活性化機構:脂肪滴に会合するBmLsd1がボンビコール産生に必須であり、そのPBAN刺激に伴うリン酸化にはBmCaMKIIが関わっていることを明らかにした。(3)必須脂肪酸のPG細胞内取り込み機構:BmFATPが細胞外からC18脂肪酸を取り込むとともに、取り込んだ脂肪酸を脂肪酸アシル-CoAへと変換するacyl-CoAシンセターゼ活性を持ち、生成したC18脂肪酸acyl-CoAは脂肪滴TG合成へとmgACBPにより輸送される機構が示唆された。
|