今年度は、イネにおける根でのアンモニウム同化機構及び生長過程の葉・登熟過程の穎果での転流窒素再利用機構上のグルタミン情報伝達系へのOsACR9の関連性について重点的に解析を進めた。 (1) OsACR9のアミノ酸結合特性解析による窒素シグナル選択性の検証 可溶性タンパク質として組換えOsACR9を大量発現できる大腸菌内発現系を構築した。今後、精製後の同タンパク質のアミノ酸結合能を解析する予定である。 (2) イネにおけるOsACR9転写・翻訳産物の発現・蓄積特性の解析 アンモニウム処理後のイネ根では、OsACR9転写産物は短時間で蓄積し、その翻訳産物は表皮・外皮・厚膜組織細胞群と維管束柔細胞群に主に分布した。イネ葉身では、OsACR9転写産物は若い未抽出葉身に主に蓄積し、その翻訳産物は維管束柔細胞群とメストム鞘細胞に主に分布した。登熟初期の未熟玄米では、OSACR9翻訳産物は主に背部維管束柔細胞群と糊粉層細胞に分布した。OsACR9は、グルタミン応答性遺伝子が発現する細胞群に分布する傾向を示した。緑色蛍光タンパク質とOsACR9の融合タンパク質のイネ細胞での一過的発現解析より、OsACR9の核局在が示唆された。 (3)OsACR9相互作用因子の単離 イネ未抽出葉身cDNAライブラリーを用いた酵母Two-Hybrid法により、OsACR9の相互作用因子候補として推定転写因子タンパク質を単離した。 (4)OsACR9遺伝子発現抑制イネでの窒素・炭素代謝系遺伝子群の発現変動解析 イネ根のグルタミン応答性遺伝子候補をトランスクリプトーム解析により網羅的に選抜した。また、アンモニウム供与したOsACR9遺伝子発現抑制イネと野生型イネの根のトランスクリプトーム比較解析を行なった。これらの結果の比較により、OsACR9が発現に関与する可能性のあるイネ根のグルタミン応答性遺伝子候補を選抜した。
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