黒ボク土、褐色森林土等から分離・精製した腐植化度の異なるフミン酸10点についてX線回折スペクトルを測定し、網面サイズ分布、網面積層数分布の分析を行った。002バンドを用いた網面積層数分布の解析では、γバンドの影響を排除することが困難であり、正確な計算ができなかったが、網面サイズを反映する11バンドについては、測定条件検討の結果、全てのフミン酸から解析可能な強度で検出することができた。Carbon Analyzer 2007を用いた11バンドの解析により、フミン酸中に縮合環数4〜37に相当する0.24〜1.68nmの炭素網面が存在することが明らかになった。最も縮合度が高い縮合環数37の炭素網面はA型フミン酸のみから検出された。総炭素網面含量および縮合環数7、14、19、30に相当する各炭素網面の含量と黒色度および^<13>C NMRから求めた芳香族炭素含量との間に高い正の相関を見出し、腐植化の進行に伴ってそれらの存在比が高くなり、土壌中における分解性の低下に寄与していることが推察された。炭化物はA型フミン酸の前駆体のひとつと考えられてきたが、フミン酸中の炭素網面サイズは、グラファイト構造が発達した炭化物と比較すると明らかに小さく、炭化物の寄与が小さいことが示唆された。フミン酸と炭化物のTEM(透過型電子顕微鏡)観察によって確認された。また、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析の予備実験では、フッ化水素処理によって灰分を除去した後に、陽イオン交換樹脂を用いて試料を十分にH型とすることで、解析可能なデータが得られることが明らかになった。
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