研究概要 |
前年度の研究によって、XRDから推定したフミン酸(腐植酸)の縮合芳香環成分のサイズ分布および相対含量と腐植化度の間に有意な関係が存在することが示された。そこで、宮崎褐色森林土フミン酸を分画して得られた^<14>C年代の異なる試料を用いて、縮合芳香環組成の経時変化および他の化学的性質との関係を検証した。XRDおよびRuO_4酸化分解生成物のGC分析から^<14>C年代が古くなるほど縮合度5以上の芳香環含量が増加し、平均網面サイズもより大きくなることが明らかになった。これらの結果は、HPSECで求めた分子サイズの増大、固体^<13>C NMRによる芳香族C含量の増大と対応しており、さらに、XPS(N1s)分析より全Nに占める複素環Nの割合も古く腐植化度が高いフミン酸ほど高いことが分かった。以上のように、フミン酸の続成過程における構造的安定化の方向性が明らかになり、また、宮崎土壌フミン酸について安定性の違いを示す構造モデルの構築に用いるパラメータを得ることができた。また、腐植化度の異なるフミン酸についてFT-ICR MSスペクトル解析を行った。その結果、3000を越えるm/z値200~1000の分子ピークが検出され、そのうちC,H,Oから構成されている分子が約1/3を占めた。検出されたピークにはC12~C34の脂肪族モノまたはジカルボン酸やリグニン類様物質が含まれていた。注目していた縮合芳香環類については、XRDやRuO_4酸化分解で見つからなかった新しい化合物を含む1~7個のカルボキシル基で置換されたベンゼン環数3~9の化合物の存在が推定された。
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