まず本研究においてCsmA、CsmBと相互作用するタンパク質を同定するためCsmA、CsmBのC末端にprotein AのlgG結合箇所を2つもつZZタグを融合したCsmA-ZZ、CsmB-ZZをそれぞれの野生型タンパク質の代わりに、csmA、csmB元来のプロモーター下で発現するAspegillus nidulansの株を作製した。この株は野生株と比較して生育にある程度以上が見られたためCsmA-ZZ、CsmB-ZZは野生型並には機能を有しないことが示唆された。これらの株について細胞抽出液の膜画分を調製し免疫沈降を行ったが、CsmA、CsmBの細胞内での存在量が元来非常に少ないためこれら融合タンパク質と特異的に共沈するタンパク質の同定には至っていない。そこで現在これら免疫沈降の条件検討を行うとともに、融合タンパク質を高発現できる株の作製をも試みている。一方、酵母Saccharomyces cervisiaeのtwo-hybrid法を用いてCsmA、CsmBと相互作用するタンパク質を探索するため、csmA、csmBのmRNAに対するcDNAを調製し酵母S. cerevisiaelにおける発現系を作製中である。 また、本研究開始当初は平成21年度実施予定であったが、Yarrowia lipolyticaにおけるcsmA、csmBのオルソルグCSM1、CSM2についてもその単独、二重破壊株を作製し、それらの株の性質の解析を一部行った。その結果、どちらの破壊でも通常の生育にはほとんど影響が出ないが、csm1破壊株はキチン結合性色素であるCalucofluor white、Congo redに対して生育が強く感受性になり、csm2破壊株は弱く感受性になることが明らかになった。このことからこれら遺伝子産物がY. lipilyticaにおいて細胞壁の完全性を保つ働きを持つことが示唆された。
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