研究概要 |
緑膿菌に関しては、酸素呼吸における5種の末端酸化酵素(aa_3, cbb_3-1, cbb_3-2, cyo, CIO)のうちの1種のみを発現する四重変異株を用いて、各酵素のエネルギー生産効率の指標となるH^+/O比(プロトン排出効率)を測定し、昨年度の酸素親和性に関する結果と合わせ、各酵素の酵素学的特徴を明らかにした。飢餓時に誘導されるaa_3を用いる呼吸鎖が最も高いH^+/O比を示し、この酵素が低栄養時の効率的なエネルギー生産に関与していると考えられた。また、他の酵素の代替的な役割を果たすCIOを用いる呼吸鎖が最も低いH^+/O比を示した。さらに、マイクロアレイを用いて微好気条件下での活性窒素ストレス応答について網羅的遺伝子発現解析を行い、転写調節因子DNR,FhpR,ANRが果たす役割を解明した。 光合成細菌Rhodobacter sphaeroidesについては、微好気条件下での活性窒素ストレス応答に関するマイクロアレイデータの詳細な解析を行い、一酸化窒素(NO)の解毒機構に加えて、ヘム生合成系、含硫アミノ酸生合成系、鉄取り込み系が活性窒素ストレス応答に関与していることを明らかにした。 好熱性水素細菌Hydrogenobacter thermophilusについては、全ゲノム配列に基づくタイリングアレイを作製し、好気、微好気、嫌気(脱窒)の各条件で特異的に発現する遺伝子の網羅的解析を行った。本菌の持つ4種の好気呼吸鎖末端酸化酵素は、それぞれ酸素濃度に応じて特異的な発現パターンを示し、これらの使い分けが、本菌の広範囲の酸素濃度での生存に重要であることが示唆された。
|