研究課題/領域番号 |
20380048
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 哲夫 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (20170334)
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研究分担者 |
加藤 雅士 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 准教授 (70242849)
金丸 京子 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教 (00420365)
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キーワード | 菌類 / 発現制御 / バイオマス / 応用微生物 / 遺伝子 |
研究概要 |
XlnRによる転写制御メカニズムを解明するため、誘導物質であるキシロースに依存したXlnRのリン酸化について詳細な解析を行った。Phosphate-affinity SDS-PAGEにより、XlnRのリン酸化状態を解析したところ、XlnRは誘導物質の非存在下においてもリン酸化されていたが、キシロース添加により速やかに高度リン酸化状態に移行した。また、キシロースは10μMという極めて低濃度でリン酸化を引き起こすこと、キシロースの代謝物であるキシリトールがリン酸化を引き起こさないことから、キシロースが生理的誘導物質であると考えられた。キシロースによる高度リン酸化は可逆的であり、キシロース除去によりもとのリン酸化状態に移行した。XlnR支配下のXynG2遺伝子の転写産物は高度リン酸化にやや遅れて検出され、脱リン酸化後しばらくして消失した。以上から、高度リン酸化XlnRが活性型のXlnRであることが示唆された。バイオマス分解酵素の生産制御の中核をなすと考えられるXlnRの制御メカニズムがほぼ明らかになったことから、本因子の改良によるバイオマス分解酵素の高生産が期待される。 セルラーゼ遺伝子群の転写制御に関しては、関与する転写因子遺伝子を制御可能なプロモーターの支配下に置き、高発現を行った。その結果、セルラーゼ生産が完全に抑えられた。この事実は、本因子変異株でセルラーゼ生産が低下するという事実と一見矛盾するが、本因子とXlnRのような因子が複合体として機能すると考えると理解できる。すなわち、複合体の一方のみが過剰発現しDNAに結合するため、複合体がDNAに結合できないものと考えられる。また、セルラーゼ生産に新たに2種の転写因子が関与することが明らかとり、複合体形成と合わせて、セルラーゼ生産が極めて複雑な制御を受けることが明らかとなった。
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