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糖質酵素が触媒する糖転移作用を制御できる新しい現象を3つ見出した。すなわち、1)長鎖オリゴ糖を生産する新規な転移酵素、2)触媒水の結合部位、3)受容体の結合部位、である。本研究の目的は、これらの現象を解析し、転移作用の分子機構を知り、応用研究に結びつけることにある。具体的には、i)それぞれの現象から「糖転移を支配する構造因子(蛋白質の部分構造)」の決定;ii)その機能の機構究明;iii)構造因子を他の酵素に移植;iv)有用な機能の利用、である。糖転移反応の改良・開発は要求が強いため、応用研究への発展を図る。計画は順調に進行しており、次の研究成果を得た。
長鎖オリゴ糖の生産酵素:1)酵素の結晶化とX線結晶構造解析:X線構造解析を行い、立体構造を得ることに成功した。2)構造因子の決定:長鎖オリゴ糖生成に関わる構造因子として予想した触媒サイトから遠位にあるループに対して削除実験を行った。削除体の機能解析から当該ループが長鎖オリゴ糖生成に関与することが認められた。3)構造因子の移植:前項で決定した構造因子(ループ)を通常の加水分解酵素に移植し、糖転移活性を測定した。転移能が約2倍に上昇する結果が得られ移植に成功した。本ループの転移作用に対する強い貢献が明らかになった。触媒水の結合部位:4)他の糖質酵素への応用:他の糖質加水分解酵素について触媒水結合サイトを予想し、変異導入・動的解析を行った。加水分解の減少と転移の増加が観察され、オリゴ糖生産において触媒水結合サイトの変異は有効であると考えられた。受容体の結合部位:5)応用研究への発展:ハナバチ酵素・長鎖オリゴ糖生成酵素・糸状菌α-グルコシダーゼの受容体結合サイトに対する変異導入で、オリゴ糖生産能に変化が認められた。特に糸状菌酵素では転移特異性が変った。本サイトの改変が糖転移作用に与える効果に関し理論構築が可能となった。
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