研究課題
トランス・トランスレーションは、情報分子mRNAと情報を読みとる分子tRNAの両方の機能を果たすキメラ分子tmRNAの働きにより、停滞した翻訳を解消し、結果として2本の情報分子から1本のキメラペプチドを合成する変則的翻訳システムである。そして、この変則的翻訳により生じた異常タンパク質に分解の目印を与える。本研究は、我々が新しく提案した「tmRNA結合タンパク質がtRNAおよびmRNAを分子擬態する」という新しい概念に基づいで、この変則的翻訳システムの分子メカニズムの解明を目指すものである。1.SmpBのC末端領域(mRNAを分子擬態する部分)に様々な変異を導入し、ステップごとの反応速度に与える効果を解析した。C末端領域を欠失させると、欠失させた長さに応じて第1ステップおよび第2ステップにおける反応速度がいずれも低下した。C末端領域(133-160)に1アミノ酸置換を導入したところ、147番目のトリプトファン残基を置換させると第1ステップにおける反応速度が著しく低下したが、EF-TuによるGTP加水分解活性には影響を与えなかった。2.SmpBのC末端領域に相当するペプチドを合成し、ステップごとの反応に対する阻害効果を調べたところ、第1ステップ全体に対しては阻害効果を示したが、EF-TuによるGTP加水分解活性には影響を与えなかった。以上の結果は、「tmRNA結合タンパク質がtRNAおよびmRNAを分子擬態する」という仮説を強く指示するものであった。
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