野生型及びIRE1βKOマウス由来の大腸上皮細胞の組織染色、蛍光抗体、電顕、免疫電顕などの手法による形態観察により、IRE1β-/-マウスの大腸杯細胞では小胞体が肥大化しムチンを蓄積している可能性が示された。実際、大腸上皮から細胞抽出液を調製しゲル電気泳動を行うと、IRE1β-/-マウス由来では、スタッキシグゲルの底にタンパク質が凝集している像が観察された。この凝集タンパク質を集めLC/MS/MSにて分析すると、予想通りムチンが凝集していることが判明した。一方、野生型マウスではこのような凝集は起きなかった。大腸切片を用いてのmucin in situ hybridysationでは、KOマウスではmucin mRNAの安定性が増加していることが明らかとなった。このことから、杯細胞では、IRE1βが活性化すると小胞体膜上のmRNAを切断している可能性が考えられた。今後はこの可能性を明らかにする実験を行う予定である。一方、IRE1αによるXBP1 mRNAスプライシングでは、共役的に翻訳されているXBP1uのC末側領域がXBP1u mRNAの小胞体膜への繋留に機能していること、この繋留機構を阻害すると、小胞体ストレス時のXBP1u mRNAのスプライシング効率が落ちることを明らかにした。またIRE1αによるXBP1 mRNA切断後にRNAをつなぐ働きをするリガーゼ活性をin vitroでのXBP1u mRNAのスプライシング活性を指標に分画した。
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