すべての真核細胞は固有の細胞形態を有し、それは細胞の機能と密接に関係している。細胞形態を決定する重要な因子が細胞極性である。一方、チェックポイント機構は、生命維持にとって重大な異常が生じた際、その異常を解消するまで自身の細胞増殖を停止させる、生命維持にとって必須な機構である。細胞極性やチェックポイント機構を制御するシグナル伝達経路の解明(基礎研究)は、関連する疾病や医薬探索の基盤研究(応用研究)として、極めて重要である。そこで、本研究では、従来の、両酵母(分裂酵母と出芽酵母)の細胞極性制御の解明をさらに進めるとともに(基礎研究)、その研究成果を、細胞極性制御に重要なシグナル伝達経路を標的とする生理活性物質探索系へと展開する(応用研究)。具体的には、3つのテーマを設定し研究を展開する。各テーマの本年度の研究実績を以下に記す。1)酵母の細胞極性の確立・維持に必須なMOR経路の下流分子の同定とその普遍性の検証:昨年度、同定した分裂酵母のMOR経路関連分子について、MOR経路との機能的関連性を詳細に解析した。その結果、MOR経路と重複した機能を持つ新規経路の存在が示唆された。また、分裂酵母で同定した上記経路について、出芽酵母での重要性を調査中である。2)酵母の細胞極性の変換機構に関与する分子の同定とその普遍性の検証:昨年度に引き続き、分裂酵母の細胞極性変換機構に重要なリン酸化酵素を網羅的に探索し、その機能分類を行った(投稿中)。また、DNA複製異常時の細胞極性変換制御機構の全体像をほぼ明らかにした(投稿中)。一方、出芽酵母では、昨年度に引き続き、zds1変異体のCa^2+シグナル伝達経路による細胞極性変換制御に関連する新規リン酸化酵素を網羅的に探索し、多数の候補分子を同定した。現在、その分子の機能を詳細に解析中である。3)細胞極性制御分子を標的とする医薬探索系の構築:昨年度に引き続き、出芽酵母のCa^2+シグナル伝達経路制御機構の探索を実施した。その結果、新規関連分子が多数、同定され、現在、それらの機能的関連性を詳細に解析中です。本年度は具体的に探索系の開発につなげたい。
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