研究概要 |
平成20年度は主に以下の3つのヘテロ環を含む天然有機化合物の合成研究を展開した。 海産アルカロイドChartelline:モデル実験で開発したこの化合物の構造上の最大の特徴であるインドレニンspiro-β-ラクタムの新合成法を実際のChartelline合成に利用するために、12員環マクロラクタムの合成を検討した。モデル実験で確立したオキシムのN-アシル化では、必要な12員環マクロラクタム合成が進行しないことが分かった。一方、アルデヒドとN-ヒドロキシアミドの脱水縮合を検討中、全く予期しない8員環のラジカル環化反応が進行し、8-6員環生成物が得られることが分かった。この二環性生成物の環拡大によって12員環マクロラクタムを合成できると考え、今後検討することにした。 抗腫瘍性抗生物質Pactamycate:ジアセトングルコースから合成した分子内にナイトロンとアセチレンとを持つ化合物の分子内1,3-双極子付加反応によって得られるイソオキサゾリンは、更に加熱すると、環縮小しアジリジンアルデヒドを与えることが分かった。そこで、このアジリジンを還元的に開環しexo-アリルアミンを合成し、Pactamycateの合成に必要な官能基を揃えることに成功した。 血管新生阻害剤Cortistatin A : Hajos-Parrisケトンから合成されるexo-エポキシドを有するC環部分とA環部分をもつスルホンアニオンをカップリングさせ、分子内NHK反応によってB環に相当する7員環を構築するルートを検討した。Hajos-Parrisケトンの不飽和ケトンα位にカルボン酸を導入し、脱炭酸をともなったMannich反応によってαメチレンケトンを合成した。OsO4酸化によってジオールとし、exo-エポキシドを有したC環部分の前駆体の合成に成功した。
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