研究概要 |
平成22年度は主に以下2つのヘテロ環生理活性天然物の合成研究を展開した。 (1) 海洋天然物chartelline:まず12員環マクロラクタム前駆体の合成において利用していたStilleカップリングをSuzuki-Miyauraカップリングに切り替え、毒性のある有機スズ化合物利用とその分離の問題を解決した。次いで、ラジカル渡環反応による8-6員環化合物の合成条件を詳細に検討した。 その結果、ラジカル開始剤は必要なく、微量の酸素で反応が十分進行することが明らかになった。しかし、微量の酸素量を制御することが困難で、反応の再現性の問題を解決することができなかった。一方、β-ラクタムの分子内N-ビニル化反応によるchartellineの10員環閉環に向け、脱保護可能なβ-ラクタムの合成を検討した。 (2) 抗腫瘍抗生物質pactamycin:まず、ジアセトン-D-グルコースから分子内1,3-双極子付加反応の前駆体の合成ルートを再検討し、量的供給を可能にした。次いで、分子内1,3-双極子付加反応の条件を詳細に検討したところ、N-ベンジルヒドロキシアミン、N-フェニルヒドロキシアミンから調製したナイトロンともに、分子内1,3-双極子付加反応-環縮小反応が、室温付近で進行することが明らかになった。さらに最初の生成物であるイソオキサゾリンは観測されず、同一反応条件下で環縮小反応が進行したアジリジンアルデヒドを単一の生成物として与えることが分かった。
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