これまでの光親和性標識実験から、光反応性の天然型アセトゲニン誘導体([125I]TDA)が、ウシ心筋ミトコンドリア複合体-Iの膜ドメインに存在するND1サブユニットに特異的に結合することがわかっている。そこで今年度は、[125I]TDAで架橋したND1サブユニットのタンパク質化学的解析を実施し、[125I]TDAの結合部位をアミノ酸残基レベルで明らかにしようとしてきた。 現在までに得られている実験成果を次に記述する。 1) [125I]TDAで架橋されたND1サブユニットをSDS-PAGEに供して粗精製し、エンドプロテアーゼAsp-Nあるいはリシルエンドペプチダーゼ(Lys-C)による限定ペプチド消化の最適条件を検討した。その結果、いずれの場合も界面活性剤SDSを含んでいないとタンパクの沈殿が生じてしまう結果になり、可溶化するためにSDSを0.1%程度含んでいることが重要であることがわかった。 2) 最適な条件下でND1サブユニットの限定分解を行い、ペプチド断片をTricine-SDS-PAGEで電気泳動した後、ゲルのオートラジオグラフィーから消化されたペプチド断片のおおまかな分子量を調べることによって、ペプチドマッピングを行った。その結果、Peptide Cutterで予想された消化パターンとの比較から、[125I]TDAで架橋されるアミノ酸は、Tyr127とPhe198の領域に存在することを明らかにした。
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