研究課題
サポシンはスフィンゴ糖脂質の代謝に関わり、その機能不全により重篤な神経疾患が引き起こされる糖タンパク質である.この病理メカニズムを解明するため、我々はその化学合成を試みている。予備実験ではサポシンCの配列を2つに分割し、N末端とC末端側のペプチドを固相合成し、セグメント縮合を試みた。しかし、N末端セグメントは疎水性アミノ酸を多く含むためか難溶性であり縮合は進行しなかった。この問題を解決し、一般的な難溶性の糖タンパク質合成法を確立するため、本研究では、N末端側のチオエステルの可溶化を促進してセグメント縮合を可能とする方法を検討している。昨年度、ペプチド配列中の一部のアミド結合を側鎖水酸基との間のエステル結合に置き換えてペプチドの溶解性を向上させる、O-アシルイソペプチド法の利用により、N末端ペプチドの溶解性向上に成功した。その合成途上、N末端アミノ酸であるAsnを欠いたセグメントは、さらに高い溶解性を持つことが明らかとなったため、本年度は1残基短いN末端セグメントを合成し、C末端セグメントとの縮合、ジスルフィド結合形成を経て1残基短いサポシンCを得た。CDスペクトル測定の結果から、このサポシンCも正しい立体構造を形成しているものと推定された。そこで今後の機能解析をこのサポシンを用いて行うこととし、その大量合成を行った。また、同様の方法で、糖鎖を持つサポシンCの合成にも成功した。以上のように化学合成サポシンを用いた機能解析という当初の目的を達成することに成功した。また、ペプチドの溶解性を向上させる別法としてアミドプロトンを保護する方法も検討した。モデルペプチドを用いて検証したところ、保護基の存在により溶解性を向上させることに成功した。今後この方法も疎水性ペプチドの溶解性向上に利用できるものと期待される。
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