研究課題
癌化学療法における重大な問題の一つは、癌細胞の耐性獲得である。癌細胞では、癌抑制因子であるp53の変異あるいは脱落していることが多く、そのために遺伝子の安定性が低い。このため、癌細胞は常に遺伝子変異を繰り返しており、周囲へのストレスから逃れるような様々な耐性を獲得する。したがって、遺伝子修復を阻害する化合物は、癌細胞の抗腫瘍剤、放射線療法への感受性を増大させることが期待される。平成20年度は、遺伝子修復機構のうち、相同組み換え機構をターゲットとしたスクリーニングを展開した。組み換え修復が起こることにより全長ルシフェラーゼが発現するレポーターアッセイを指標に、約3万サンプルの天然物ライブラリーについて、相同組み換え阻害剤のスクリーニングを行った結果、72個のヒットを得た。これらのヒット株のうち、12菌株について活性物質の精製を行った結果、beauvericin、antimycin類、leucinostatin A、BおよびB2の単離に成功した。これらの化合物は、ミトコンドリア呼吸系あるいはタンパク質合成系に作用する化合物であることから、相同組み換え特異的な阻害活性ではないと判断した。さらに、平成20年度は、スプライシングをターゲットとしたスクリーニング系の構築を進めた。がん抑制遺伝子p27は、通常スプライシングを受け不安定な形で発現する。スプライシングを阻害することにより、安定なp27の発現が促進され癌細胞に対し細胞毒性を示す。本スクリーニングを展開するため、スプライシングが阻害された際に全長ルシフェラーゼが発現するレポータープラスミドを導入した、stable transformantを作製した。本細胞は、通常状態ではルシフェラーゼが発現していないが、スプライシングを阻害するとルシフェラーゼが強く誘導されることを確認した。
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