研究概要 |
がん抑制遺伝子p27は、通常スプライシングを受けて不安定なタンパク質として存在するが、スプライソソームが阻害されスプライシングを受けないp27のまま発現すると、安定なタンパク質として存在し、細胞増殖阻害あるいは細胞死を誘導する。平成21年度は、遺伝子スプライシングの可視的検出を可能とする系の構築を確立し、スクリーニングを展開した。p27タンパク質のC末端に、スプライシングを受けているとルシフェラーゼ遺伝子が発現せずに、スプライシングが阻害された場合にルシフェラーゼ遺伝子が発現するようなレポーターコンストラクトを、細胞に導入し、安定形質転換細胞を調製した。本系を用いて、放線菌およびカビ約16,000菌株以上から調製した、約65,000サンプルを用いて、ハイスループットスクリーニングを行った結果、5種類の化合物の単離に成功した。これらの化合物のうち、一つは現在臨床開発中のスプライソソーム阻害剤pladienolideの誘導体であり、本アッセイ系により真の活性物質を得ることが出来ることが明らかになった。その他の化合物として、遺伝子発現を促進することが報告されているヒストンデアセチラーゼ阻害剤であるFR901375を得た。一方、細胞増殖活性化物質テレオシジンの誘導体である7-geranylindolactam-Vも本アッセイ系で活性を示したが、細胞増殖によるレポーター活性増強であることが示唆された。しかしながら、これらの化合物のようにその活性発現メカニズムからは、スプライソソーム阻害活性が予測できない2種類の化合物の単離に成功した。これらの化合物は、構造的にもあるいは報告されている活性的にも、スプライソソーム阻害活性は推定できず、これまで報告されているスプライソソーム阻害剤とは異なるメカニズムを有する抗腫瘍剤のリード化合物となることが期待される。
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