研究課題
遺伝子スプライシング阻害剤として得られた、FD-895は現在臨床開発が進められているpladienolideの誘導体であった。本化合物は12員環マクロライドであるが、抗菌活性などは示さず細胞毒性のみを特異的に発現する化合物として報告されていたが、その作用メカニズムは不明なままであった。がん抑制遺伝子p27のスプライシング阻害を指標としたスクリーニングにおいて、FD-895はレポーター遺伝子であるルシフェラーゼを、12μMの濃度で23,500%まで発現誘導したことから、FD-895はスプライシング阻害を介して細胞毒性を発現することが明らかになった。また、他の活性物質として得られたFR901375は、HDAC阻害剤として知られており、非選択的に多くの遺伝子の発現を誘導すると考えられる。本化合物は、10μMの濃度で4,700%までルシフェラーゼの発現を誘導した。他の活性物質として得られた化合物は、発がんプロモーター物質teleocidinの誘導体である7-geranylindolactam-Vに関しては、細胞増殖促進活性を示すと考えられ、ルシフェラーゼ誘導活性よりもむしろ細胞数が増殖した結果、総ルシフェラーゼ活性が増加したためと考えられる。また核酸誘導体であるtoyocamycinを活性物質として得たが、本物質は代謝拮抗型の抗腫瘍活性を示す化合物として知られている。今回、本スクリーニング系にて得られた結果から、代謝拮抗阻害の他にスプライシング阻害活性が抗腫瘍活性の作用機序の一因として作用する興味ある結果が得られた。さらに、マイコトキシンとして知られるsecalonic acidを活性物質として得たが、転写因子のDNA結合阻害という報告されている阻害メカニズムでは、スプライシング阻害活性は説明できないことから、さらに詳細な作用機作解析が期待される。
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