研究概要 |
亜鉛含有タンパク質は種々の生理機能を有し、今や3000種類以上も同定されている。我々はこれまで、ラットでの亜鉛不足状態では味覚異常が起こることを確認し(J.Nutr.,2001など)、その原因の一つに亜鉛酵素の炭酸脱水酵素(Carbonic Anhydrase=CA)の低下があることを証明した(Biomed.Res.Ttace Elements,2010、など)。これまでに発表されたデータから、亜鉛欠乏時には唾液中のCAVIの分泌濃度が低いこと(Goto.T.et al.,2000;島崎ら、2009)、味受容膜におけるCA活性が低いこと(Goto,T., et al.,2000)摂食中枢における食欲調節神経ペプチド分泌の変化(亜鉛不足時の食欲亢進ペプチドの発現低下、食欲抑制ペプチドの発現上昇)、などが、我々も含めた国内外の研究で確認されつつある。平成22年度の研究では、さらに以下の今後の研究に有用な知見を得た。 (1)亜鉛欠乏食を与えると3日目から生ずる食欲低下リズムを探るために検討したところ、血漿中活性型グレリン濃度は、実験食開始1~7日目で亜鉛欠乏食給餌群で継続して高値の傾向を示し、周期的な変動は認められなかった。したがって、摂食量が低下した亜鉛欠乏食給餌ラットも空腹感を感じていることが示唆された。(2)マイクロダイアリシス装置によるリアルタイム解析により、視床下部のLH(外側野)、VMH(腹内側核)において、摂食促進作用を有するノルエピネフリン(NE)のKCl刺激による放出量は、亜鉛欠乏餓鰍において低下傾向がみられた。したがって、亜鉛欠乏食給餌後速やかに、LH、VMHでのNE量が低下する可能性が示唆された。(3)スーパーメックス行動解析装置により、亜鉛欠乏食給餌による摂食量の低下は、自発行動量低下によって生ずるものではないことが示唆された。
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