研究課題
海馬神経可塑性に対するビタミンA情報伝達経路の役割現在までの本課題における研究では、脳機能に対するレチノイン酸受容体RARの役割を解明することを目的として、前脳特異的に野生型RARαまたはドミナントネガティブ型変異体RARα(dnRAR)を発現するコンディショナル変異マウス(TgM)の作製・解析を進め、行動学的解析から、レチノイド情報伝達系は海馬依存性記憶形成を正に制御することを示してきた。本年度は、このTgM群海馬CAlニューロンの神経可塑性を電気生理学的に解析した。RAR TgMではLong-term potentiation(LTP)の向上が観察された。一方、dnRAR TgMではbasal synaptic transmissionおよび長期増強(LTP)の障害が観察され、また、このLTPの障害は刺激の増加によって解消されることが明らかとなった。以上より、TgM群の記憶能力と海馬LTPとの相関が観察され、レチノイド情報伝達経路の記憶形成制御に対する重要性が示された。記憶形成能力に対する脳機能に対するビタミンA情報伝達経路の役割社会認知記憶課題において、dnRAR TgMを未成熟マウスに1.5分間提示する学習条件下では2時間記憶(短期記憶)の障害が観察されたが、3分間提示して学習条件を強くすると、この障害が改善された。また、この変異型マウスでは24時間の長期記憶にも障害が観察されたが、10分から2時間の時間間隔で2回学習させるspaced trainingによりこの障害も改善された。以上の結果は、変異型マウスでは海馬LTPの障害が刺激強度を高めることで解消される結果と相関していた。以上のように、ビタミンA情報伝達経路は海馬神経可塑的変化を介して、記憶制御を行っていることが強く示唆された。今後、ビタミンAによる記憶制御の分子機構を解析する。
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