研究概要 |
我々はネギ属植物の食品機能性に関して、抗血栓作用、解毒系酵素の誘導作用、がん細胞増殖抑制作用などの諸作用を、分子メカニズムを中心に検討してきた。その中で多硫化スルフィドであるジアリルトリスルフィド(DATS)が細胞骨格タンパクのβチュブリンを酸化的に修飾し、重合を妨げることを見出した。すなわち、チュブリンの脱重合を促進して、がん細胞の増殖(細胞分裂)を顕著に抑制することに加え、アポトーシスを誘導してがん細胞死をもたらした。この発見は、スルフィドの作用に関して、分子メカニズムの一端を明らかにしてはいるが、一方において、一食物成分が直接生体分子を修飾することの事実を提示し、がん細胞に対しては、細胞の分裂増殖を抑制し、やがて死滅させるという毒物的挙動を取る。本研究課題では、スルフィドの生体内での挙動の解明と同時に疏水性度など各種スルフィドの物理化学的性質と機能の関係について追究した。生物学的活性としてヒト大腸がん細胞株HT-29の増殖抑制とチュブリン重合抑制能を測定した。各種trisulfideの疎水性はoctanol/water分配係数を指標として震盪フラスコ法により測定した。合成した9種類のtrisulfideのうちdipropyl trisulfide, diallyl trisulfide, dibutenyl trisulfideはHT-29に対して強力な増殖抑制作用を示した。また、チュブリン重合抑制能も同様の傾向を示した。sulfideの疎水性は側鎖の長さに比例して増加し、増殖抑制、チュブリン重合抑制能は疎水性とparabolilcな相関を示した。
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