研究概要 |
マツ材線虫病抵抗性マツ樹種(ストローブマツ、テーダマツ)、抵抗性/非選抜クロマツの同じ材料を用いて、抵抗性発現の要因を遺伝子発現、組織学的要因、樹体成分の3方向から探った。 遺伝子発現では、クロマツにおける生体防御関連遺伝子をスクリーニングするため、接種した個体のみで発現する遺伝子を単離出来るsuppression subtractive hybridization法に基づいてcDNAライブラリーを構築した。生体防御関連遺伝子が経時的に変化することを考慮して組織の採取を行った。これまでに4ライブラリーを構築し、5,200クローンをピックアップした。そのうち1,200がBLAST検索により既知の遺伝子と相同性があることを確認した。しかし、マイクロアレイによる網羅的発現解析には本ライブラリーでは非効率であるため、完全長cDNAライブラリー構築に着手する。 組織化学的には脂質やフェノール類に関しては接種による明瞭な変化は認められなかったが、リグニン化で差異がみられた。ストローブマツとテーダマツでは若干差異があったが接種後早期にリグニン化がみられ、その後も進行した。クロマツでもリグニン化がみられたが感受性の程度による差異があった。抵抗性でもクローンによって差異があり、抵抗性樹種のいずれかと類似する傾向がみられた。感受性クローンでは形成層の反応性、線虫抑制力が小さく、木部組織への侵入、破壊が顕著であった。 抵抗性に関わる物質は、テーダマツ、ストローブマツのメタノール抽出物を菌を用いて検定した。樹皮、材ともに接種ストローブマツで明瞭な活性がみられた。線虫の分布は、ストローブマツでは成分の変化と対応が示唆され接種部近辺への侵入分散数が多くその後次第に減少したのに対し、テーダマツでは侵入数は少なくその後接種部近辺で急増する試料が一部にみられた。
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