研究概要 |
マツノザイセンチュウを接種した異なる家系の抵抗性および非選抜クロマツを用いて抵抗性発現要因の解析を行った。 遺伝子発現では、クロマツの1,175遺伝子およびテーダマツで単離されている11,121遺伝子を利用してマイクロアレイを作成し、抵抗性および感受性クロマツにおけるマツノザイセンチュウ接種後、1、3、24、168時間後の遺伝子発現プロファイルを行った。各時系列において非接種サンプルの遺伝子発現をリファレンスとして2倍以上の発現量に差が認められる遺伝子を比較した結果、接種後168時間で抵抗性と感受性に顕著な違いが見られ、特に感受性ではPR-4とPR-5の過剰発現が認められた。この結果から、少なくとも感受性は抵抗性と比較して、マツノザイセンチュウに対する生体防御反応が活性化していることが分かった。 抵抗性関連物質の探索では、抵抗性及び感受性のクロマツ各1系統を対象とした。試料を温水抽出し、限外濾過により3つの分子量範囲に分画・濃縮した。各画分の抗菌活性を調べたが、線虫接種の有無によらず活性は検出されなかった。試料を冷水抽出し、適宜濃縮後に抗菌活性を調べたが、いずれも活性は認められなかった。 解剖学的には、数品種の抵抗性クロマツと感受性クロマツに対して樹体内での病徴進展や防御応答、線虫の増殖について評価した。その結果、抵抗性品種では初期の組織破壊が感受性品種よりも遅れること、このタイムラグによって時間のかかる防御反応が離れた場所で間に合うこと、品種によって防御機構が異なることなどが明らかとなった。 以上の結果から、抵抗性クロマツでは非特異的な抵抗性機構の抑制が抵抗性発現に関与していることが示唆された。
|