研究概要 |
研究代表者らは,数年来,マツ材線虫病における木部通水阻害の進展過程を樹木用MRIによって可視化するという方法で,非破壊観察を試みてきた.研究代表者らが開発した樹木用MRIにおいては,これまではソレノイドコイルを樹幹に直接巻きつけるという方法のため,撮像部位が1箇所に固定されていた.そのために,ある1断面での通水阻害の進展過程は可視化されたものの,通水阻害の三次元的な拡大過程は不明であった.そこで,本研究においては,U字型コイルの採用によって,撮像部位を自由に変更できるようにMRIを改良した. マツ苗の1年生主軸または当年生主軸に線虫を接種後,当年生主軸および1年生主軸上での通水阻害の拡大過程を立体的に把握するために,樹幹軸上の多くの横断面を数日おきに撮像した. その結果,マツ材線虫病における通水阻害(エンボリズム)の生じ方には,小規模な通水阻害が散在する「散在エンボリズム」と,比較的大規模な通水阻害である「集塊エンボリズム」とがあり,集塊エンボリズムは接種部付近から次第に上下に広がっていくことが示された。また,病徴前期においては,通水阻害部の断面積は,接種部から離れるにしたがって小さくなるという傾向を示すが,ある部位の横断面のほぼ全体が通水阻害部位によって覆われた時点で,樹幹軸上のすべての部位で通水阻害が急激に広がって,完全な通水停止に至る,という進展期の通水阻害拡大の特徴が明らかにされた.
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