研究概要 |
木部通水阻害の進展と線虫の樹幹内分布の関係を明らかにするために,U字型コイルを装着したコンパクトMRI(核磁気共鳴画像装置)を用いて,3年生クロマツ苗25本の接種後の通水阻害の3次元的な進展を非破壊的に観察した.その後,観察した各部位から線虫を分離して,撮像部位の通水阻害の進展過程と線虫の分布との関係を検討した. 接種5日後には,接種傷以外の部位に新たな黒色の領域(通水阻害)が認められ,その領域は接種部付近でわずかに生じていたものから撮像部位全域にわたってみられるものまで様々であった.通水阻害は,接種部あるいは,樹幹のある部位から面的に拡大していく通水阻害(集塊エンボリズム)と,樹幹横断面上で斑点状に散在する通水阻害(散在エンボリズム)とがみられ,それらの断面積および個数が拡大していく過程が観察された. これらの観察にもとづき,通水阻害の拡大状況から病徴進展過程をPhase1~5に分類した.接種部のみに黒色領域がみられたものをPhase1,まとまった黒色領域が±3cmの範囲で生じていたものをPhase3,撮像部位全域に拡大していたものをPhase5とし,Phase2とPhase4はそれぞれのPhaseの中間のものとした. 各Phaseの個体数は,Phase1から順に,3,14,4,1,2個体となっており,いずれのPhaseにおいても接種部付近で最も黒色領域が拡大していた. 各Phaseにつき2個体(Pase4は1個体)の線虫分布を調べた結果,樹皮ではいずれのPhaseにおいても接種部付近にのみ多数の線虫が分布していたが,木部においてはPhaseが1から5へと進行するにつれて線虫の増加と分布拡大が生じ,線虫と通水阻害の分布は対応していた.
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