研究課題/領域番号 |
20380087
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
練 春蘭 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 准教授 (40376695)
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研究分担者 |
奈良 一秀 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 助教 (60270899)
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キーワード | 重金属鉱山性荒廃地 / 菌根菌 / 重金属汚染 / 重金属耐性 / 菌根菌接種 / DNA解析 / 菌根菌群集構造 |
研究概要 |
1.異なった重金属鉱山性荒廃地における菌根菌群集構造の解析 中国の安徽省銅陵市銅鉱山、江蘇省湯山市銅鉱山、湖南省湘潭市マンガン鉱山、冷水江市チタン鉱山および花垣市鉛、亜鉛鉱山、 それぞれの重金属鉱山荒廃地に生育している馬尾松とQuercus spp.から菌根を分離した。その結果、一般的な森林と比べ、汚染 地では、菌根菌感染率は低く(34%)、種の多様性も低いことが分かった。 2.樹木苗の定着と成長に対する外生菌根菌の影響 安徽省銅陵市銅鉱山と湖南省湘潭市マンガン鉱山、二カ所の荒廃地に菌根菌(Pisolithus spp.、Cenococcum geophilum、Laccaria laccata)に感染した当年生実生(アカマツ、Quercus spp.)を植え、その生存調査を行った。Quercus spp.については、生存率は感染と未感染の間で有意差が見られなかった(60%)。一方、アカマツでは、感染した実生の生存率(40%)は未感染(5%)と比べ、顕著に高かった。 3.菌糸培養実験系を用いて異なる外生菌根菌種の銅(Cu)耐性メカニズムの解明 50種の外生菌根菌、それぞれの銅耐性を調べるため、異なる銅濃度の液体培地で培養した。その結果、菌種によって銅への耐性が 異なることが分かった。菌糸の成長量を指標として、高濃度に耐性を示す菌種と、耐性は高くないが、高濃度に銅を蓄積できる菌種が 明らかにされた。これらの菌種は銅鉱山性荒廃地における森林再生に利用できる可能性がある。 4.樹木と外生菌根菌共生系を用いて菌根菌共生系の銅耐性メカニズムの解明 菌根菌感染と未感染のアカマツ苗の成長に対する銅ストレスの影響を調べた。菌根菌は2種、銅の処理は5レベルを用いた。菌根菌 未感染処理では、375~1500mg Cu/kg soilの処理で、対照処理と遜色ない成長と光合成速度を示した。3000mg Cu/kg soilの 処理では、成長と光合成速度ともに減少した。菌根菌感染処理では、低濃度(375、750mg Cu/kg soil)では、成長と光合成速度 に減少が見られなかったが、高濃度(1500、3000mg Cu/kg soil)では、顕著な減少が見られた。これらの結果から、高濃度の銅ストレス条件下で、菌根菌感染により、樹木の銅耐性を向上させることはなかった。
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