研究課題/領域番号 |
20380087
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
練 春蘭 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 准教授 (40376695)
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研究分担者 |
奈良 一秀 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (60270899)
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キーワード | 重金属鉱山性荒廃地 / 菌根菌 / 菌根菌群集構造 / 重金属汚染 / 重金属耐性 / DNA解析 / 菌根菌接種 |
研究概要 |
鉱山性荒廃地から溶出する有害物質を軽減するには、植生による被覆によって雨水での急激な風化を防ぐことが重要である。こうしたことから、鉱山性荒廃地における森林の再生は汚染問題の効果的な解決法の一つである。そこで、本研究では菌根菌を利用することにより、より効果的な鉱山性荒廃地での森林再生法を考案した。 最終年度に主に以下の研究成果が得た。 (1)外性菌根菌間の相互作用に対する重金属の影響:これまでの研究では単独種を対象とした実験が多く行われてきたが、自然環境下では複数の菌種が共生することが一般的である。この研究では、競争を想定して同一根系に複数種を接種する方法で、異なる重金属処理における菌根菌間の相互作用のメカニズムを解明した。 10本のアカマツの苗それぞれに、異なる10種の菌根菌を接種し、次に菌根菌を接種したアカマツの苗を5種類の重金属(Pb、Ni、Cu、Zn、Cd)のストレス下で育てて、外性菌根菌間の相互作用を調べた。ミズナラについても同一の条件で研究を行った。処理後6カ月で、いずれの処理でも、Pisolithus sp、LaccariaとC.geophilumの菌根で8~90%を占める実生が多く、他の種の菌根が殆ど観察されなかった。このことから、外性菌根菌間の相互作用に対する重金属の影響はないかもしれない。 (2)菌糸培養実験系を用いた異なる外生菌根菌種の鉛(Pb)、ニッケル(Ni)とカドミウム(Cd)耐性メカニズムの解明:50種の外生菌根菌について、それぞれのPb、NiとCdへの耐性を調べ、先に行った銅と亜鉛への耐性の研究の結果と同様に菌種によってPb、Niとcdへの耐性が異なることが分かった。Pb、Niとcdに対するそれぞれの耐性菌種は検出され、これらの菌種は鉱山性荒廃地における森林再生に利用できる可能性がある。 (3)重金属鉱山性荒廃地における菌根菌群集構造の解析:花垣市鉛・亜鉛鉱山、岳陽市桃林鉛・亜鉛鉱山の荒廃地と周辺の植生非破壊地に生育している馬尾松から菌根を分離し、また、それぞれの採集した土壌と植物のサンプルの重金属含量を測定した。この結果については、菌根菌群集構造に重金属の影響はなく、土壌の組成と養分が影響していることが明らかとなった。これは(1)の研究と同様の傾向を示していた。
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