研究概要 |
本研究は、樹木の適応的な遺伝変異を明らかにするため、ブナを研究材料として適応的遺伝子の探索を試み、それら候補遺伝子の地理的変異を調べて、その生態的意義を明らかにすること、および得られた結果をもとに、ブナ集団の地域特有の遺伝資源保全やブナ林の保全管理のあり方を考察することを目的としている。本年度は、ブナのEST (expressed sequence tag:発現配列タグ)をベースとしたSSR (simple sequence repeat; microsatellite)マーカーとSNP (single nucleotide polymorphism;一塩基多型)マーカーの開発を行い、開発したマーカーを用いて、太平洋側のブナ集団の解析を行った。 1. ESTベースマーカーの開発 ブナ・ミズナラ・スダジイの内樹皮に由来するESTライブラリーを用いて、19個の異なるESTから22個のEST-SNPを開発した。ブナ16個体を用いて多型性を調べたところ、ヘテロ接合度は0.06〜0.48であった。次に、ブナの内樹皮に由来するESTライブラリーを用いて、3,317個の異なるESTから87個のEST-SSRを開発し、ブナ16個体を用いた多型性調査の結果、遺伝子座あたり対立遺伝子数は2〜21、ヘテロ接合度は0.06〜0.97であった。 2. 適応的候補遺伝子検出のための集団解析 太平洋側のブナ4集団を対象としてEST-SNP座を用いて集団解析を行い予備的なデータを得た。
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