研究課題/領域番号 |
20380093
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
THOMAS・T LeI 龍谷大学, 理工学部, 教授 (00388159)
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研究分担者 |
宮浦 富保 龍谷大学, 理工学部, 教授 (90222330)
近藤 倫生 龍谷大学, 理工学部, 准教授 (30388160)
河原 孝行 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, グループ長 (70353654)
山下 直子 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (70353901)
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キーワード | ジンチョウゲ属 / フェノロジー多様性 / 適応進化 / 適応戦略 / 生理生態特性 / 炭素収支モデル / 分子系統 / 保全状況 |
研究概要 |
本研究は、生理生態特性、生育環境条件のデータから得たパラメーターに基づき適応戦略を検証し、分子系統解析から種分化の年代配列を調べることにより、各種の葉のフェノロジーの適応進化のプロセスを解明することを目的とした。系統解析の結果、カラスシキミ・コショウノキを含む常緑性のものは、単系統でより基部で分岐し、祖先的であった。ナニワズを含む落葉性の種もまた単系統であったが、こちらが派生的であり、さらに夏緑性のチョウセンナニワズから冬緑性のナニワズ・オニシバリが生じていた。これらの結果を照らし合わせてみると、葉のフェノロジーが常緑→夏緑性→冬緑性、性表現は、両全性→雌雄異株性へと機能的分化が進み、これらの形質を獲得したことによって生育環境が、常緑樹林内からより明るい落葉広葉樹林へと移っていったものと推定された。標高の高い山の林冠のオープンな場所に生育する夏緑性のチョウセンナニワズは、標高の低い落葉広葉樹林内に生育する冬緑性のオニシバリよりも祖先種であり、オニシバリは、林冠が閉鎖する暗い夏の間に林床で生存するために必要な生理的可塑性を獲得できなかったため、葉のフェノロジーをシフトさせることで、林内が暗い間は余計なコストをかけないため葉を落とし休眠状態を保つという戦略を獲得したものと考えられる。フィールドでの環境条件をシュミレーションし実験室で生育させたオニシバリの年間獲得炭素量を推定したところ、夏は葉を落とし、秋と春に光合成をおこなうというフェノロジーパターンで、年間炭素量が最大になることが明らかとなり、葉フェノロジー多型の獲得が種の生存戦略のキーとなり、種分化のトリガーとなったことが検証された。
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