森林総合研究所北海道支所羊ヶ丘実験林(札幌市)内の2haほどの範囲で5月から10月にかけて26回の捕獲を行い、のべ22頭のコテングコウモリを捕獲し、皮膜を採取し、アルミバンドで標識し放した。22頭のうち、昨年までに標識したものが5個体、今年の初めて標識したものが16個体あった。昨年までの標識5個体の内訳は、オス1個体、メス4個体であった。オスは1回のみ、メスは多いものでは過去4回の捕獲記録があった。過去2年間の結果も含め、コテングコウモリの定着性の高さが明らかとなった。捕獲した2個体(雌雄各1頭)には電波発信機を付け、ねぐらを9-12日間特定し、枯葉の利用を確認した。誘引試験を行った50個の人工枯葉のうち2個について、温度変化のパターンからコテングコウモリの利用によるものと推測できたものがあった。利用率が低い原因としてボタン型温度ロガーが超音波を出してコウモリを遠ざけている可能性が疑われた。今後、この問題を改善して、人工ねぐらへの誘引成功率とねぐら利用実態の解明を進める必要がある。他種由来の18種類のプライマーのうち12種類でコテングコウモリのマイクロサテライトDNA配列を増幅でき、そのうち8座でコテングコウモリ用のプライマーを新たに設計できた(1座は片方のみ)。新たに設計したものを含め、12種類のプライマーを105個体から得られたサンプルに適用した結果、このうち3座については増幅できない対立遺伝子が多く、1座については多型性がなく、さらに1座については長さが1塩基分異なる対立遺伝子が混在していたため、遺伝子型を正しく決定できなかった。その結果、残り7座を増幅するプライマーがコテングコウモリの配偶様式や社会構造の研究に利用できると考えられた。
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