京都議定書報告において算定が必要な枯死木中の炭素動態推定の精度向上と、土壌を含めた有機物分解の高精度予測のために、迅速・簡便なリグニン・セルロース定量法と白色腐朽・褐色腐朽などの腐朽様式の寄与率の推定方法を開発し、全国から集めた1500点程度の枯死木サンプルのリグニン・セルロース定量と、腐朽様式の寄与率の推定を行う。本年度は、全国各地から既に収集済みの間伐残材(約800点)を利用し、従来法によるリグニン・セルロース定量をおこなった。スギ・ヒノキ・カラマツを中心に、約260点の分析を終了した。これにより、スギ・ヒノキについては当初の予定数の分析を終了し、近赤外分光分析による簡易定量法の開発に必要なキャリブレーションデータが揃った。来年度は簡易定量法を開発し、その方法を使用してさらに分析点数を増加させる予定である。また、白色腐朽・褐色腐朽などの腐朽様式の寄与率の推定方法を開発するため、アルカリ抽出成分を定量し、約90点の分析を終えた。 既に収集済みの間伐残材はすべて針葉樹であり、日本の枯死木の炭素動態推定には広葉樹の枯死材の収集が不可欠である。本年度は、宮崎県の綾試験地において、枯死してからのおおよその年数が明らかな枯死材約20点の収集を行い、これらの試料の乾燥密度を測定した。来年度は、これらのサンプルのリグニン・セルロース量を定量し、近赤外分光分析による簡易定量法の開発を試みる。
|