研究概要 |
京都議定書報告において算定が必要な枯死木中の炭素動態推定の精度向上と、土壌を含めた有機物分解速度の高精度予測に必要となる迅速・簡便なリグニン・セルロース定量法と白色腐朽・褐色腐朽などの腐朽様式の寄与率の推定方法を開発し、全国から集めた枯死木サンプルのリグニン・セルロース定量と、腐朽様式の寄与率の推定を行う。従来法によるリグニン・ホロセルロース等の成分定量を行った390点程度のサンプルのうち、260点程度について近赤外反射スペクトル(4,000~10,000cm-1)を採取した。これらのスペクトルデータと成分定量値から、PLS回帰法による検量線作成を行い、スペクトルデータから成分定量を行う回帰式を作成した。全樹種・全地域に適用可能な回帰式が得られたが、樹種を分けてPLS回帰式を作成した方がよい結果が得られると考えられたため、樹種別のPLS回帰式も作成した。この回帰式により、反射スペクトルによってリグニン、ホロセルロース、溶媒抽出成分、アルカリ抽出成分の定量が可能となった(灰分量、蛋白量については良好な検量線が得られなかった)。このPLS回帰式を使って、従来法による定量分析を行っていないサンプルについても反射スペクトルによる成分定量を行った。これらの600点弱の成分データライブラリとサンプリングサイトの位置情報および位置情報に付随する気候情報(気温、降水量)を結合しデータベース化した。これらのデータの解析から、分解が進むに従ってリグニンの相対的濃度が上昇するが、その上昇は数%程度であり、リグニンとセルロースの分解に大きな選択性が認められないことが明らかになった。また、アルカリ抽出成分の増加も大きくなく、褐色腐朽タイプよりは白色腐朽タイプの分解が主たる分解過程であることが推察された。これらの結果をもとにリグニンとホロセルロースの分解モデルを完成した。
|