研究概要 |
深過冷却を-40℃以下の低温まで持続する樹木の木部柔細胞には多様な過冷却促進(氷核形成阻害)物質が存在する可能性を先に指摘した。これらの内、数種類のフラボノール配糖体を既に同定している。 本年度は、既同定のものと類似の構造をもつ12種類のフラボノール配糖体につき過冷却促進活性を測定した。いずれのフラボノール配糖体も過冷却活性をしめしたが、アグリコンの構造、結合する糖の種類、糖結合位置の違いにより過冷却活性は大きく変化した。しかし、これらの構造の違いと、過冷却活性の変動との間の一定の関係性は見いだされなかった。 また、数種類の加水分解型タンニンがカツラ木部柔細胞に存在し、高い過冷却活性を示すことを明らかにした。これらは、1,2,3,6-tetra-0-galloyl-β-D-glucose及び2,3,6-tri-0-galloyl-α,β-D-hamameloseである。これらの化合物を数種類含むと考えられる五倍子タンニン酸、および茶から抽出した縮合型タンニンであるカテキンにも高い過冷却活性が見られた。縮合型タンニンのモノマーについては、没食子酸を含むカテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレートに高い過冷却活性が見られた。 以上の過冷却活性の測定はすべて、氷核形成細菌を含む水についての測定結果であるが、純水を含む様々な水に対する過冷却活性を引き続いて研究している。
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