研究概要 |
担子菌による木材分解の初発反応として,へミセルロースの分子構造認識が重要な役割を果たしていると予想している。本研究は,このことを生化学的ならびに分子生物学的に実証することを目的とする。初年度目は,すでに全ゲノム情報が開示されている担子菌であるPhanerochaete chrysosporiumaを供試菌として,これらの菌が木材分解の初期過程で生産するへミセルロース分解に関わる多様な加水分解酵素を網羅的に同定し,さらに各へミセルロース構造に対する分解特性を明らかにすることを第一の目標とした。また,これらの酵素ならびにセルロース等の主要な木材成分の分解に関わる酵素に対応する遺伝子の発現応答について時系列的に定量解析を行い,これにより担子菌による木材成分分解の分解機序を明らかにすることを第二の目標とした。 セルロース,セルロース+キシランを炭素源基質とする液体培地でP. chrysosporiumを培養し,得られた菌体外液を二次元電気泳動法によりプロテオーム解析を行った。その結見,66種のタンパク質についてアミノ酸配列情報を取得し,そのうち50種については帰属を行った。さらに,キシランの添加によりキシランの分解に関わる酵素だけでなく、セルロース分解やその他植物細胞壁成分を分解する酵素について分泌が促進されることを明らかにした。また,同定されたタンパク質の中でへミセルロースならびにセルロース分解に関わるGH45ならびにGH74をコードする遺伝子をcDNAとしてクローニングし,さらにPichia pastorisの発現系を用いて組換えタンパク質として酵素を得て,その性質を明らかにした。さらに,6種のCel7酵素の遺伝子のcDNAを検出するための特異的なプライマーを設計し,これを用いてセルロース培養系におけるCel7遺伝子の発現解析を行った結果,それぞれのCel7遺伝子においてセルロース分解過程での発現挙動が大きく異なることを示した。
|