研究課題/領域番号 |
20380103
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河本 晴雄 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (80224864)
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研究分担者 |
坂 志朗 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (50205697)
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キーワード | バイオマス / バイオエネルギー / バイオリファイナリー / 熱分解 / 分子機構 / 官能基 / セルロース / リグニン |
研究概要 |
木質バイオマスは、石炭、石油と比べるとはるかに低温で熱分解される。この理由として、研究代表者らは、水酸基、アセタール、フェノール、アルデヒド(糖の還元性末端)などの官能基が重要な役割を果たしているものと考えている。このような背景から、木質バイオマスの構成成分中の官能基に着目した分子レベルでの熱分解機構解明研究を進めており、平成22年度の研究により、以下の成果が得られた。 セルロースなどの多糖昨年度までの研究において、セルロース分子中の還元性末端基が他の部分構造と比べて高い反応性を示し、還元性末端基からの反応が比較的低温度域におけるセルロースの熱着色の一つの要因であることを明らかにした。今年度は、これをさらに発展させ、非プロトン性のポリエーテル中での加熱処理において、還元性末端基のモデルとしてのグルコース(還元糖)が熱安定化され、さらに高温にすることで、通常の熱分解で認められる熱グリコシル化による多糖の生成と脱水反応ではなく、C2、C3カルボニル類へのフラグメンテーションが高選択的に進行することが見出された。これらの結果より、糖分子中の水酸基間での水素結合が酸性、塩基性触媒として作用する機構が提案された。すなわち、非プロトン性のポリエーテル中ではプロトンドネーションが無く、これにより、酸性条件で触媒される熱グリコシル化と脱水反応が抑制されたものと考えられた。本提案は、木材多糖の熱分解機構を解明する上で重要な知見である。 リグニン一次熱分解により生成する熱分解物が二次分解を受ける際に重要な役割を果たす構造として、メトキシル基が提案された。メトキシル基は、450℃以上の温度域で酸素-炭素結合がラジカル開裂し、この反応とこれに付随して起こるメトキシル基のメチル基への転位反応によりリグニン由来熱分解物の二次分解反応の大部分が説明されうることが明らかになった。
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